2色に変化する不思議な宝石アレキサンドライト
昼間の太陽の下ではエメラルドのような緑色。
夜になるとルビーのような深い赤色。
当たる光によってカラーチェンジをする不思議な宝石、それがアレキサンドライトです。
今回は「皇帝の宝石」とも言われるアレキサンドライトの魅力についてまとめました。
アレキサンドライト・昼のエメラルド夜のルビー
魅惑の変色性
アレキサンドライトの魅力は、何と言っても光のもとで色が変わる不可思議さです。
太陽光の下では緑色、白熱灯やろうそく等の下では赤や赤紫に輝きます。
実は、変色性を持つ宝石はアレキサンドライトに限りません。
サファイアやガーネットなどにも、中には光源により色が変わって見える個体が存在します。
しかし、アレキサンドライトの変色性は、数ある宝石の中でも突出しています。
なお、アレキサンドライトは「変色性を示すクリソベリル(金緑石)」のことです。
変色性の著しい個体ほど重宝される傾向にあります。
名前の由来
アレキサンドライトは、ロシアの皇帝アレクサンドル2世にちなんで名付けられました。
1855年、先王であったニコライ1世がクリミア戦争の中で崩御したため、急遽王位に就いたのが若きアレクサンドル2世でした。
アレキサンドル2世は、農奴解放令の実施など大改革を行ったことで世界的に有名な皇帝です。
発見時の秘話
初めてアレキサンドライトが発見されたのは、ロシアのウラル山脈でした。
太陽光の下で緑色の光を放つアレキサンドライトは、当初エメラルドだと考えられており、新しいエメラルド鉱山が発見されたと噂されました。
ところが、採掘した宝石をろうそくの下で見ると赤みがかって見えたのです。
これはエメラルドではないとして、「色の変わる未知なる宝石」であると認知されることになりました。
緑と赤に輝くこの宝石はロシア国旗の色でもあったため、ロシア国内で絶大な人気を誇りました。
採掘量が少なかったにも関わらずあっという間にその存在が知られるようになり、今でもロシア産のアレキサンドライトは、庶民には手の届かないような高値で取引されています。
石言葉
秘めた想い
昼と夜で異なる色を発する性質は、まるで自分の心を隠した照れ屋さんのよう。
片思いの人ならアレキサンドライトを身に付けて「あなたに思いを寄せている」と控えめに主張できるかも。
また、2色に輝く性質から、ロシアではアレキサンドライトのジュエリーを必ず2つ以上身に付けます。
1つだけを身につけていると孤独になると言われているためです。
産地
発見されたのはロシアのウラル鉱山ですが、今はほとんど降り尽くされ入手は不可能に近い状態です。
ロシア産のアレキサンドライトは、最も美しいと言われていますが、最も希少で高価でもあるのです。
現在、高品質のアレキサンドライトが採れると言われているのが、ブラジル。
透明度が高く、緑と赤のカラーチェンジがはっきりしている個体が多く産出されています。
他にもスリランカ、インド、タンザニアなどで産出されています。
特にタンザニアでは、猫の目のような筋の入ったアレキサンドライトキャッツアイが産出されるとして有名です。
アレキサンドライトの選び方
鮮やかに色が変わるものを選びましょう。
自然光と白熱灯の下で見たときのカラーチェンジがはっきりしているものがオススメです。
一般的には、自然光の下で青みがかった緑色に光る個体は、くっきりとカラーチェンジする傾向にありますよ。
さらに言えば、インクルージョンの少ない個体がベターです。
アレキサンドライトのお手入れ方法
比較的硬い宝石なので、普段のお手入れは柔らかい布で丁寧に撫でてあげるだけでOK。
汚れが目立つ場合は、専用クリーナーが中性洗剤入りのぬるま湯に漬け、柔らかめのブラシで軽く擦ってください。
汚れを落としたら、よくすすぎ乾いた布で水分を拭き取りましょう。
どうしても汚れが落とし切れない場合は、宝石店に持ち込んで洗浄してもらいましょう。
硬度の高い宝石ではありますが、ダイヤモンドやルビー、サファイアほどではありませんので、保管の際はぶつからないよう分けてください。
アレキサンドライトの査定のポイントと買取価格
アレキサンドライトは、ダイヤモンドのように
カラット・カラー・クラリティー(透明度)・輝きに加えて、カラーチェンジ(変色性)についても評価されます。
中でもカラーとカラーチェンジが重要で、宝石の大きさより優先されることもあります。
高価買取となるのは、深みのある濃い発色をする個体です。
淡い個体やカラーチェンジが弱い個体は、買取価格が下がってしまう傾向にあります。
買取相場は日々変動するものの、最高品質の1カラットの個体で30万円以上。
2カラットを超えると100万円以上の高価買取となることも。
まとめ
昼と夜で異なる顔を持つ宝石アレキサンドライト。
まるで魔性の女性のように、人々を魅了しトリコにしてきました。
世界中で採掘される量がほんのわずかで、市場に出回る個体が少ないことも惹かれる一因なのかもしれません。
鮮やかに変色するその姿を一目見たら、その瞬間恋に落ちたような錯覚を覚えるでしょう。
アレキサンドライトは希少性の高い宝石ですので、弱い変色性を持つよく似た宝石をアレキサンドライトと偽ることもあるようです。
お求めの際は鑑定書を確かめてからご購入下さい。