今なお愛されるデイトナの美しき歴史とモデルの変遷
ロレックスの代表作とも言えるデイトナは、誕生から50年以上の月日が流れているにもかかわらず、熱狂的なファンを獲得し続けている長寿モデルです。
今回は長年愛され続けているデイトナの誕生から最新作までの歴史をモデルの特徴とともにご紹介します。
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デイトナの特徴
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クロノグラフ
クロノグラフとはストップウォッチ機能のことです。
スタートボタンを押すと、細く美しい針が精密に時間を計測します。
文字盤や時間を示す太い針を邪魔しないシンプルかつスタイリッシュなデザイン。計測にズレが生じるリスクも最小限に抑えられています。
ストップウォッチ機能は、デジタル時計では珍しくありませんよね。けれども機械式時計に搭載するのは至難の技。非常に複雑な機構となるため、熟練の職人の腕が必要不可欠なのです。
なぜデイトナにこのような複雑な機構が組み込まれているのかというと、デイトナがモータースポーツ用の腕時計だからです。
レーサーにとって1秒は大変な重みを持った時間。だからこそ時間を計測できるストップウォッチの機能が大変重要なのですね。
使う人のことを第一に考えた結果、ロレックスはデイトナにクロノグラフという特殊機構を搭載したのです。
デイトナのクロノグラフは、手巻きから始まりましたが、第4世代以降は自動巻に変更されています。
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タキメーター
タキメーターとは、文字盤周辺に記された数字のことです。
正式には「タキ・プロダクトメーター」を言い、ベゼルに刻まれたメモリとクロノグラフ機能を用いて利用します。
たとえば平均速度の算出や時間あたりの作業量などを測定するのに便利です。
前述のクロノグラフをスタートさせ、1km走行したタイミングで針が指すメモリが平均時速になるというもの。
たかがメモリですが、レーサーには欠かすことのできない機能です。
タキメーターは視認性が第一ではあるものの、そのデザイン性の高さからデイトナ人気を押し上げた要因でもあるのです。
歴代デイトナでも繰り返し変更が施され、気品と視認性を兼ね備えた美しいタキメーターが見る人を惹きつけます。
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デイトナの歴史とモデルの変遷
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レーシングウォッチとして誕生
デイトナシリーズの誕生は1950年代に遡ります。
アメリカのサーキットコース「デイトナ インターナショナル スピードウェイ」への協力が開発のきっかけとなりました。
このころのデイトナは現在「プレ・デイトナ」として親しまれています。まだファーストモデルですらありません。
タキメーターがベゼルではなくダイヤルに記されているRef.6238 3カウンタークロノグラフなどがこの世代。
ROLEXの文字の下には「CHRONOGRAPH」と刻まれています。
まだオイスターの文字はありません。
初代デイトナ・ファーストモデルは少し経った1963年ごろから製造されました。ムーブメントを改良し、マイナーチェンジを施し、デイトナは徐々に現代の形へと変貌していきます。
さらにムーブメントが一新された第2世代は、4年間しか製造されなかった超レアモデル。
耐震機構を強化し、振動数を増やしたことにより、より精度の高いムーブメントとなっています。
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現代デイトナの元祖・第3世代デイトナ
第3世代は手巻きムーブメントの最終モデルです。第4世代以降は自動巻に変更されました。
また防水性に優れた「スクリューロック・プッシャー」を採用し、オイスター(防水)の名が冠せられました。オイスターケースとねじ込み式プッシャーにより50m防水を実現。後期にはトリプルロックに変更になり100mまで防水可能になりました。
マイナーチェンジがいくつも施されましたが、デイトナモデルの中で最も長く生産されたモデルです。
第3世代のデイトナは、年式や仕様の違いで価格が大きく上下します。ご購入の際はお間違えのないようにご注意ください。
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セレブたちを魅了したポールニューマンモデル
第3世代ではロレックスとデイトナを世に知らしめた「ポールニューマンモデル」が登場しました。
Ref.6263のレアモデルです。俳優ポール・ニューマンがその腕に着用していたことから広く知られるようになりました。
文字盤がホワイトとブラック。インダイヤルのアラビアインデックスが大きく、一段くぼみ立体的に見えることが特徴の一つです。
2020年、ポール・ニューマンが着用したとされるRef6263は、オークションで5億円超の値がつきました。
完全な状態で残っているポールニューマンモデルが発見されれば、5億円とはいかないものの、想像を絶する値段で取引されるに違いありません。
なおポールが妻から贈られたロレックスは20億円超で落札され、今尚腕時計の金額として最高値を誇っています。
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ロレックス念願の自動巻きモデル登場
第4世代が登場したのは1988年ごろからです。
デイトナはそれまで手巻き式でしたが、ようやく現代につながる「自動巻」が誕生します。ただしまだ自社製ではなくゼニス社という別会社の機構をベースに作成されたものでした。
ベゼルは金属製に統一されサファイアクリスタル風防を採用。エレガントさに加え堅牢性もアップし、王者ロレックスの風格をますます知らしめるように。
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完全自社製デイトナの誕生
2000年から第5世代が誕生。
第5世代のムーブメントは完全ロレックス社製です。
デザインは第4世代を引き継ぎ、ムーブメントの変更を施しています。
インデックスの配置や太さなどを変更し、肉厚を感じさせるケース。
上品さを前面に押し出しビジネスシーンでもまったく遜色のない仕上がりに。
第5世代が発表された当時は、ムーブメントの信頼性に不安を感じる声もありましたが、まったく問題もありませんでした。
マイナーチェンジを何度か行い2016年まで製造。生産終了後は取引価格がぐんぐん上昇しています。
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史上最高のデイトナ116500LN
第6世代でまず目につくのは「史上最高の完成度」とまで言わしめたRef.116500LNでしょう。
2016年に発表されてすぐに注目の的になり、世間の話題をかっさらいました。SNSでは史上最高とまで言われたロレックスの最強モデルです。
特筆すべきはロレックスの特許技術セラクロムベゼルです。第4世代以降使われていたのはステンレスベゼル。美しく輝く反面、傷がつくと目立つという特徴も。
一方でセラクロムベゼルは、素材にハイセラミックを使用しています。
傷がつきにくく退色しないとして重宝されることになりました。
ところで型番の最後に「LN」がつくようになったのも116500LNからです。この「LN」とは、フランス語のLunette Noie(黒いベゼル)の略称。黒ベゼルに白抜きの文字が時計全体を引き締めています。
エレガントな美しさを最大限引き出したモデル116500LNは、ユーズドでも400万円は下らない値段で取引されています。
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宇宙に煌めく2021年最新作
https://www.rolex.com/ja/watches/cosmograph-daytona.html
2021年に発表されたデイトナの新作モデルは、宇宙を舞台にしています。
デイトナには「コスモグラフ」が先に記されていますよね。このコスモグラフという言葉はロレックスによる造語で、直訳すると「宇宙を記録する」という意味になります。
デイトナが誕生した当時(1960年ごろ)のアメリカでは宇宙開発がさかんに叫ばれていました。月に降り立ったアポロ計画も1961年から実施されていますよね。このこともあってロレックスはデイトナに、NASAの宇宙開発も視野に入れた名前をつけたのです。しかしアポロ計画の時計はオメガに決まってしまいました。そこで「コスモグラフ」だけが宙に浮いたまま、モータースポーツ用の腕時計としてアピールするようになったという歴史があります。
そんなコスモグラフ・デイトナから、ようやく宇宙を連想させるモデルが誕生!それが今回発表されたRef.116519と116508です。
共通するのはダイヤルに「メタリックメテオライト」という希少な物質が使用されていること。
メタリックメテオライトは何百万年も前に爆発した小惑星に由来する物質です。非常に繊細なこの物質を薄く切り分け、類稀なる色と輝きに富んだ美しいダイヤルが誕生しました。
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まとめ
誕生から50年以上経った今でも人々を魅了し続ける、デイトナの軌跡とモデルをご紹介しました。
デイトナは時代に合わせて変化し続け、次第にその姿を変貌させていきました。最新モデルは遥か彼方の宇宙を彷彿とさせる煌びやかな風貌。今後もデイトナは私たちとともに進化を遂げていくことでしょう。
未来のデイトナがどんなものになるのか、今からワクワクしますね!